「地域通貨『カマ』好評」。この書評を書き始めたちょうどその頃、ある日の夕刊の見出し記事が私の目に飛び込んできた。大阪・西成の通称「あいりん地区」内で流通しはじめたという、地域通貨「カマ」について書かれたものであった。
地域の軽作業や清掃、折りづる作り等で「カマ」を稼ぐと、専用の通帳にプラスポイントが書き込まれ、そのポイントを使って、格安の朝食セットやヨガ教室で使えるのだという。現金がなくても、また、その時にポイントをもっていなくても、後で返す努力をすれば良いというシステムだ。
「お金がない→モノを手に入れられず、生活できない」という貨幣社会の中で、果たしてこれで良いのだろうかと疑問を持ち始めた人たちがいる。著者もそのひとりだ。
環境、福祉など、自分たちの身の回りで何が必要とされているのかを真剣に考え、地域や共同体独自の発想で、将来に向けて取り組むべき時が来ているのだという。
日々の生活の中で、最低限これだけは欲しいという人にこそ回ってこない「お金」に替わるマネー、自分ができることをして、その代わりにして欲しいことをしてもらうという「互酬」のシステムを備えたマネー=「あたたかいお金」の流れ。それが「エコマネー」なのだ。
いくら働いても、「モノ」を買っても、将来それと交換できる「モノ」が手にはいるのだろうかという不安感、本当の豊かさとは何だろうかという煩悶は、人々の中にじわりと浸透しはじめているように感じる。また、ペイオフ導入や、金融不安を目の当たりにして、純金ブームが起きているとも聞く。しかし、貨幣経済自体が、崩壊とはいわないまでも、将来、それまでの「お金」による価値評価が変わってしまったとき、私たちはどうなってしまうのだろう?
本書は、今日の貨幣経済がたどってきた変遷と、その問題点、将来を予見することによって、我々生活者が、真に心豊かに暮らすことのできる地域社会を、自分たちの手で作ろうではないか、「して欲しいこと」「自分にできること」に応じて、独自の「エコマネー」のシステムを作るにはどうしたらよいかを、論理的、かつ科学的に検証し、アドバイスしてくれる。
「モノ」を所有することや、国家や法制など、他人から与えられた価値観だけでは、我々はもはや満足することも、安住することもできないと感じ始めている。そういう意味からも、本書は、将来の社会づくりのヒントとなり、自ら考え、行動する人のバイブルとなるであろう。
書評:松田 三樹子 |