デジタル技術の発展により、コンピューターやアプリケーションをそれなりに操って、そこそこの作品を誰もが容易に作り出せるようになった。そして、プロとアマチュアの差が曖昧になっているという現実も生まれてきている。
一朝一夕では身につかない「修業時代の苦労は、必ずや地力となる」とは著者の言葉だが、私自身、デジタル化以前から印刷業界に身を置いていたお陰で、まだインクの乾かない印刷物を見ながら、途中工程にかかわる人とどのようにコミュニケーションをとれば、ミスのない、よりよい製品になるのかを日々の作業の中で体験することができた。そして、それは何よりも貴重な財産になっている訳だが、「たとえある一定の期間でも、先輩や先達に付いて学ぶことを経験してみてはどうだろうか」という著者の言葉がひときわ身にしみた。
本書は"○○になるためには?"に答える、いわゆるハウツー本ではない。
コンピューターや機械を操るのはあくまでも人間であり、人と人がよりよい関係を築き、秩序ある業界にしていくためには、まずはそこに関わるスタッフ一人一人の自覚と、高い意識が必要である。そのような中、一部の無理解な業界人へ敢えて苦言を呈し、暴露とも誤解されかねない現状を書き連ねた著者の真の意図は、ものづくりを愛し、おぼつかない足取りながらもやっと歩き始めた業界へのエールであり、愛情に根ざした希望や願いであることを忘れてはならない。
どの業界にも必ずいる一握りの"困った人々"。
不幸にしてそういう人間をクライアントに持ってしまった場合の相手の見分け方、対応の仕方などを74の掟、ルールとしてまとめた本書は、マルチメディアプロデューサーである著者の目を通して、実体験を交えながら業界の実状を赤裸々に綴ったものであり、これからデジタルコンテンツ業界で身を立てようと考えている人にはぜひとも読んでいただきたい一冊である。
書評:松田三樹子 |